腰痛  膝痛 肩痛

八味地黄丸 疎経活血湯 当帰四逆加呉茱萸生姜湯
桂枝加朮附湯 五積散 芍甘黄辛附湯

はじめに
腰痛にも漢方治療の適不適があります。
適したものとしては、腰部の筋肉痛、ギックリ腰、高齢者では変形性脊柱症、椎間板ヘルニアの一部などが挙げられます。手術の必要な椎間板ヘルニア、脊椎管狭窄症などは適しません。西洋医学を優先させます。
腰部の筋肉痛は筋肉の衰えや酷使によることが多く中年以降はよく経験します。普段から体重をコントロールし、ストレッチ体操や腰痛体操などにより腰部筋肉を増強します。

腰痛に用いる漢方薬は証に合うものを選ぶことが肝要です。病名や痛みの原因によって処方を選んでもなかなかうまく行きません。結局その方の体質や陰陽虚実の診断が大切ですが、それは個々人で違いますから用いる処方も様々です。以下に私が経験しました処方を挙げてみます。

八味地黄丸
中高年の慢性腰痛や坐骨神経痛に最も頻用される処方です。糖尿病、腎疾患、高血圧からくる腰痛、またいわゆる老人性の腰痛、椎間板ヘルニアによるもの(痛みの激しい時期が過ぎてから)にも有効です。腰が痛むばかりでなく、何となく足に力がない、足がしびれるとか、あるいは坐骨神経痛も兼ねたものにもよいです。

八味丸の使用目標は、夜足がほてる、口が渇く(多飲ではなく口を湿らす程度)、夜中頻尿、排尿障害(小便が出にくい、頻尿)、こむら返り、歩くと疲れやすい、間欠跛行などで、これらのうち一つか二つあれば用います。以上はいずれも“下半身の衰え”を示す症状で、東洋医学ではこれを腎虚と呼んでいます。なお、八味丸はふだん胃腸の元気な方の薬で、したがって体格的にも中肉中背以上です。痩せた青白い感じの方すなわち胃腸の弱い方には適しません。飲んで胃重、下利、便秘など胃腸障害を起こすようなら服用中止です。これは八味丸中の地黄という生薬が合わないためです。

疎経活血湯
症例

当帰四逆加呉茱萸生姜湯
慢性の腰痛のみならずギックリ腰などにも用います。体格は痩せて青白いとか、あるいはきゃしゃな印象がします。高齢者なら中肉中背でもよいです。
寒がり、手足は冷え、しもやけができやすい、冷えると下腹が痛むなどを目標に用います。
八味丸が胃に障り飲めないときにも試みる価値があります。
呉茱萸の味が苦辛く感じる方もいますが、これは温めて痛みを和らげる成分で胃腸にもとてもよいので飲んで心配ありません。逆にもし飲んでおいしいときはきっとよく効くでしょう。
症例

桂枝加朮附湯
ふつう四肢の神経、筋肉、関節に見られる痛み、しびれ、麻痺などに用います。これを腰痛や坐骨神経痛にも応用します。本方は、当帰四逆加呉茱萸生姜湯と同じく桂枝湯を基本に作られた処方ですが、当帰四逆加呉茱萸生姜湯ほどに冷えや冷えで悪化する傾向は目立ちません。体格的にはやはり痩せ形あるいはきゃしゃな印象がします。
症例

五積散
中年女性の腰痛症や坐骨神経痛で朝起床時に痛みが強い傾向のものに用います。そのほか冷えると腰・下腹・股が痛む、腰から股にかけて筋が張る、上半身がのぼせ足は冷えるなどを目標に用います。のぼせははっきりなくても足の冷えは重視します。
本方は薬味の多い処方で
18味もあります。内容構成から見ると、平胃散、二陳湯、四物湯、桂枝湯、続命湯、半夏厚朴湯、麻黄湯、苓桂朮甘湯、苓姜朮甘湯など多くの方意を兼ね備え、散弾銃みたいな処方といわれることもあります。速攻する例もなくはないですが、一般に薬味の多いものは効きも緩徐であるのが普通です。
症例

芍甘黄辛附湯
本方は芍薬甘草湯と大黄附子湯との合方で、急に痛んだとき、痛みが強いときに用います。エキス剤は製造されていませんが、エキス剤の芍薬甘草湯と麻黄附子細辛湯を組み合わせると、芍甘黄辛附湯に近いものになります。これでギックリ腰や坐骨神経痛に効いた例があります。
症例